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どうすれば土砂崩れから集落の人々は避難することができるか [研究室]

「ソフト防災」をテーマに社会人博士として3年間頑張って、この春に博論を仕上げた千葉幹さんですが、このたび、英文誌 Water に、その一部が受理・掲載されました。
Water誌はopen accessですので、どなたでも、無料で読むことができます。
M.Chiba, et al (2022) Analysis of Socio-Economic Factors That Influence Loss of Life in Sediment-Related Disasters, Water 14(15), 2408, 16pp.
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千葉さんのテーマは、20年以上前に、広島の災害などを契機として、ソフト対策に重点を置いて制定された土砂災害防止法について、その実効性をたかめるにはどうすればよいかという課題に挑戦したものです。
そのためには、砂防ダムのような施設を作ったり、森林管理をこれまで以上に進めたり、あるいはこの2つを組み合わせる(Eco-DRR)ことに加えて、住民が防災についての情報を十分に活用し、避難行動につなげるためのシステムが必要です。
全国各地で、実際に避難を行った集落にアンケートをとった貴重なデータがあり、このデータと各種統計をもとに、どういう属性をもった集落が避難行動を行えているかを分析したものです。コロナ渦で、現地調査に大きな制約があるなかで、重要な知見を与えています。
日本のSABOは、すでに世界的に有名ですが、気候変動が大きな問題となる中、狭い意味でのインフラ整備には限界があります。避難行動の促進など、ソフト面のSABOが、これから世界的に注目されることになるでしょう。昨日の時点ですでに300近いアクセスがありました。
関心をもたれた皆さんには、ぜひ、一読をお勧めします。

情報伝達ということでは、林家の意思決定において集落内の情報伝達が与える影響を、林政OBの芳賀大地さん(現・鳥取大)が分析しています。氏はこのアプローチで、やはり課程博士を修了し学位を得て、大学教員として活躍しているところです。

このように、森林を管理し、災害から人々を守る上で、「知」を伝え、「知」のネットワークをどうやって作るかは、林政学の重要なテーマの1つであると言えるでしょう。(古井戸)
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研究テーマ [研究室]

2022年5月28日(土)15:00から 森林科学専攻 大学院生募集公開ガイダンスが開催されます。
※申し込みが必要です
https://www.fr.a.u-tokyo.ac.jp/news/2023%E5%B9%B4%E5%BA%A6-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%99%A2%E8%BE%B2%E5%AD%A6%E7%94%9F%E5%91%BD%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%A7%91-%E6%A3%AE%E6%9E%97%E7%A7%91/

林政学研究室の最近の研究テーマ(抜粋)は、以下の通りで、
木材生産、土砂災害対策、森林レクリエーション、森林教育、森林ボランティア、
林業遺産など幅広い内容となっています。
『もり』『やま』と人間社会との関わりを扱う学問である
林政学ならではの特徴といえます。
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卒業にあたって [研究室]

みなさま、こんにちは。

 今年度で林政学研究室を学部生として卒業する泉(こうぴー)と小柳です。
卒業にあたり二名共作でブログを書かせて頂く運びとなりました。

泉につきましては、大学2年次に古井戸先生にお会いしたのが林政との最初の縁でした。
林政一択で森林科学の道に理転したことは、今思えばなかなかの賭けだったと思いますが、
卒業を迎えるにあたり、林政学研究室に所属できてほんとうに良かったと思っています。

小柳につきましては、森林教育への興味から林政研の門を叩き、
その分野での卒業研究をいたしました。
林政研のかたがたはとても温かい雰囲気で、いつも丁寧に親身にアドバイスをくださり、
おかげで卒業研究発表までやりきることができました。
感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

 さて、こちらブログということで、林政研に興味のあるかたの目にも届くかなと思いますので、以下小柳の方からはおおまかな卒論までのスケジュールを、私見ですが、紹介したいと思います。(※2021年時点なので今後多少の変更はあると思います。)

【4月〜7月】
・毎週金曜日14時〜ゼミがあります。
・内容としては、輪読や、研究テーマに関連する本・論文等の発表、メンバーのかたの研究の進捗発表、などです。
・B4生は、この時期に、どんな分野をテーマにするかある程度決めていくイメージです。
・テーマ決めについて、林政の先輩(このブログでは「石ころ」さん)曰く、
「対象地を行ってみつつ選ぶか、先行研究を読んで、その参考文献を辿りながら調査の手法を学ぶのがいいと思う。林業経済研究の『50年の歩み』からテーマ別の参考文献リストや大まかな研究史を探るのもいいかも。」とのこと。

【9月〜11月】
・9月ごろに、科研ゼミがあります。科研ゼミでは、研究計画を調書にします(ざっくり)。
・研究については、調査をしていきます。後期ゼミでは、調査結果や今後どうしていくかについて報告します。
・2週間に1回はゼミで報告する、というイメージです(ざっくり)。

【12月〜1月】
・1〜2週間に1回はゼミで報告します(ざっくり)。
・合同ゼミがあります。
・ぼちぼち論文執筆しはじめます。
・1月末に要旨提出、本文提出があります。

【2月】
・卒業研究の発表会があります。
・(必要な人は)コメントをうけて本文の修正をします。

…こんなかんじです。イメージわいたでしょうか(笑)。
 あくまで理想スケジュールなので、私は12月まで調査にいったり、本文提出のギリギリまで執筆したり、どんどん後ろ倒してしまいました…(ごめんなさい)。
 はじめは慣れないと思いますが、みんなそうなので問題ないです。
 ちなみに、私はコロナ禍で終始オンラインゼミだったので、対面のゼミいいなあとおもっています。

また、泉の方からは林政というものについて簡単に私見を述べたいと思います。
林政はあまりにも守備範囲が広いので明快な定義ができるものではありません。
Forest Policyという表現はまだしも、それを森林政策と和訳してしまうと、
どこか限定的な意味合いになってしまうような気がしています。
ただ、少なくとも林政は、人間や社会が自然環境と向き合う態度や姿勢について、
広く扱っている学問領域なのだろうと、私は解釈しています。

本年度の卒業式で藤井総長は、
「テクノロジーを扱う人間や社会側の影響とその重要性について認識しなくてはならない」
とおっしゃっていましたし、学位記授与式で古井戸専攻長は、
「長期的視点を持っているか否かは目の前の仕事を進めるにあたっても大きな差を生む」
とおっしゃっていました。
林政は、人間や社会が自然環境と向き合う態度や姿勢に対し研究を通して真摯に向き合うことで、環境全体を幅広く、長い目で、かつ謙虚に見られるフィールドだと信じています。

 たいそうなことを述べてしまいましたが、最後に林政学研究室のすべてのみなさまに感謝申し上げます。
 そして、これから林政に関わる皆様も、ぜひ楽しみつつ悩みつつ(お酒をのみつつ)、悔いのない学生生活をお過ごしください(笑)。

以上でした!
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卒業・修了おめでとう [研究室]

 今年は、3月24日が大学院の学位記授与式、3月25日が学部の卒業式でした。
 林政ゼミメンバーは、多種多様なのですが、そのほとんどが、偶然、今年旅立つことになりました。
みなさん、かなりの期間をオンラインでのゼミで議論し、調査は、主として統計や公刊資料を駆使し、メールでの質問やアンケートなども交えながら、普通なら容易に入手できるデータの入手に一苦労という状況、それもその状況がいつまで続くのかもわからない状況で、複数の研究プランを同時に走らせるというような進め方でした。

 下記の6名になります。
博士(全員、課程博士)
 劉妍さん、千葉幹さん(以上農学系研究科)、武藤裕花さん(工学系研究科)
修士
 中村一貴君(副専攻修了。主専攻は農経)
学士
 小柳有加さん、泉孝太郎君

 論文のテーマも多様で、足尾緑化NPOの意義と維持、人の死なない砂防事業(ソフト事業)、地質・森林整備を含めた流域の水解析、森林獣害要因の統計分析、鉄道林の存廃とその要因、里山での児童養護教育(すみません、テーマはかなりはしょってます)。
 これほど多様なメンバーで、輪読では同じ本を読み、発表ではお互いにコメントや質問の応酬。対象や方法論に違いはあっても、求めるものは同じ、というゼミでした。

 このうち、武藤さんは、古井戸が副査、中村君も、古井戸が副専攻の指導教員という立場でした。
 ほかにも実質的な林政ゼミメンバーが何人かいますし、修了後もポスドクで研究を続ける人もいるので、レギュラーメンバー全員が、ゼミから卒業したわけではないのですが、めでたくもあり、さびしくもありというところです。

 毎年、卒業の記事は書いていなかったのですが、今年とくに記事にしたのは、人数の多さもさることながら、初めて顔を合わせた同士も多くて、集まって写真が撮れたのも
1)7割方引越(1号館改修)が完了していて、研究室に来て貰うことができた。
2)マンボウが終わったばかりで、とりあえず会食しなければOK
という幸運があったからで、ご覧いただければわかるように喜びもひとしおだったからです。

<祝・卒業記念ギャラリー>*マスクのない写真は、すべて声を出さずに撮っています。

研究室にて1
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研究室にて2
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研究室にて3
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左:古井戸、右:劉さん@7号館の学位授与式会場
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農学部キャンパスハチ公前にて
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安田講堂をバックに
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赤門(重文・改修のため柵あり)をバックに
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安田講堂をバックに
IMG_4752.jpeg<

農3号館をバックに
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この3か月を少し思い出す [研究室]

ふとこの3か月を振り返りました。
12月8-10日に国立台湾大学(NTU)とのオンラインジョイントカンファレンス
が開催され、9日午前に林業遺産の保全に関して発表しました。

林業遺産の保全に関しては、台湾は日本より進んでいますので、
今後も持続的な活用のあり方にむけて学んでいきたいと、
発表しながら改めて思った次第です。
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同日午後には、林政OG/OB(東京大学、筑波大学、東京農工大学、名古屋大学など)
が集まる合同ゼミもズームで開催され、林政学に関する卒論・修論・博論に
関連した報告を聞くことができました。以前と変わらず、永田先生から
的確なコメントが学生たちに届けられ、なぜか私の背筋がピンと引き締まりました(笑)

なかなかの楽しい一日でした:)

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怒涛の3か月が通り過ぎました [研究室]

師走に入ってからは、博論・卒論指導がさらに熱を帯び、
「一瞬で3か月が通り過ぎた」そんな感じでした。
博士論文発表会での千葉さんや劉妍さんの受け答え、
卒論発表会でみせた泉さんや小柳さんの成長ぶりには
目を見張るものがありました。
今年度は、新型コロナの影響で、全てがズームでの
発表会となりましたが、みなさん「よく頑張りました!」



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引越たけなわ<続報> [研究室]

<速報>でお伝えした研究室の引越の続きです。
 予定では、11月5日(金)・11月8日(月)の2日間で、後期前半分の搬入は完了することになっていたのですが、少し積み残しが出て、翌9日(今日)までかかりました。

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(写真:川合あけみさんのSNSより)

 左上は、移動前の仮住まい。プレハブの2階の窓からは、目の前にマテバシイがこんなに大きく枝を広げていて、狭いながらも目をなごませてくれました。
 右上は、今回大活躍の川合あけみさんと荒井和子さん。

 これから2000箱を超える(←f推定)蔵書の開梱作業があります。(f)

 林政研究が、古いお酒を新しい革袋に入れるものであるように、今回も、(荒井さん、川合さんのお知恵や芳賀先生の綿密な設計をもとに)古い什器の使えるものはなるべく活かして、新しい空間の中に配置するように努めています。そこに、その多くがISBNコード(バーコードをイメージしていただければよいと思います)の振られる前の時代の貴重な文献を詰めて行く壮大な作業となります。
 長い歴史のなかで、ザ・林政という本に加えて、周辺分野の良書を、林地と競合する土地利用分野、林産物を利用する産業分野や生活分野、事例分析~統計分析~理論研究、ミクロ~マクロ、地域~全球にわたり、古今東西を対象に、収集しています。
 こうした収蔵分野の多様性は戦前からの傾向であり、よき伝統なのですが、おそらくどこの資料館でもそうであるように、革袋の大きさは限られており、3月までには整理しないと、最終搬入物の置き場がなくなるかもしれません。
 目下、教員一同、頭を悩ませているところです。
 すでに、複本などの受入に手を上げて下さっている大学等もあり、コロナ禍で作業が中断していましたので、落ち着いてきたらお願いしようと考えています。

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もりす君、久々 & 森林資源勘定の研究史 [研究室]

古井戸です。
柴崎茂光先生が「自分の研究を振り返る」と題してお書きになっているのをみて思い出したことがあります。

5年前にこのブログに登場したもりす君(わからない方は、右上の検索ボックスで「もりす」と入力してみてください)。
災害復興住宅についての面白い卒論を書いて、今は、同じ大学院農学生命科学研究科の井上雅文先生のご指導のもとで、博論執筆の真っ盛りです。

そのもりす君が、先日久々にプレハブB棟を訪れてくれました。
(その前にも来てくれておいしいお土産をいただいたりしていましたが、書かずにいてすみません)

もりす君は、現在、林産業の産業連関構造についての研究をしているとのことで、森林資源勘定との関係についてあらためて知りたいとのことでした。

そういえば、森林資源勘定の研究が始まったころの話をどこかに書いていたぞ。

https://doi.org/10.6012/jwei.30.28
こちらになります(『水資源・環境研究』30(2):28-29、2017年)。

文献検索では、古井戸が書いた「執筆事情」としか出てこないので何のことかわからないと思いますが、掲載誌の6号(1993年)に掲載された「自然資源勘定の研究動向」という論文
https://doi.org/10.6012/jwei.1993.19

を振り返ったもので、まだ過去を振り返るトシではないと思いつつ、この分野の研究史を記録に残しておこうと思って書いておいたのでした。もりす君の役に立てばよいのですが。
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春の林業経済学会(オンライン)あれこれ [研究室]

 3月下旬に遡るのですが、東大林政ともかかわりの深い東京農工大の主催で、日本森林学会とそのサテライト学会の1つである林業経済学会が開催されました。

 林業経済学会では、林政学研究室にかかわることがたくさんありました。
1)前助教の竹本太郎先生(東京農工大)がシンポジウム
http://www.jfes.org/kenkyukai/JFES_2021_Spring/2021_spring.html
にご登壇。大会運営委員会を努めながらの論文執筆ならびにご報告、ご苦労さまでした。

2)2019年度の「奨励賞」を受賞していながら授賞式が行われていなかったOBのT.Jones君。あらためての授賞式にビデオメッセージで参加し、受賞の挨拶(日本語)をしてくれました。
3)2020年度の「学術賞」
 4月から准教授となった柴崎茂光先生
 毎年非常勤講師として林政学関係の講義を担当して下さっているOBの山本伸幸先生
が、「学術賞」ダブル受賞となりました!
↓以上、学会表彰関係はこちら。
http://www.jfes.org/award/award_top.html

4)2021年度~2022年度の会長
 総会で、古井戸が選出されました。
http://www.jfes.org/doc/kaicho2021.html
↑こんな「会長より」を書きました。林業経済学会について知りたい方、「林業経済」と「林業経済研究」の違いがわからない方は是非ご一読下さい。(古井戸 宏通)
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引っ越し [研究室]

 皆さま、こんにちは。

 先週に引き続き「こうぴー」です。よろしくお願いします。

 昨日はゼミがありました。
 少しゼミの紹介をさせて頂きますと、週1回研究室のメンバーが集まって研究発表を聞いて議論したり本を輪読したりします。
 昨日の研究発表は博士の方2名によるもので、初めてゼミに本格参戦した自分としては発表も議論も圧巻のものでした。(外野のように語っていますが自分も頑張って議論に参加しましたよ!(笑)。)
 また、輪読についても昨日は本の分担を決めました。
 ついにゼミが始まったー!という実感が湧いてきましたが、積極的にこれからも参加していきたいと思います。(実は来週発表が控えているので頑張らないと…(・∇・))

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 最近の研究室の出来事といえば、研究室のお引っ越しです。
 またいずれ戻ってくることにはなるのですが、大学の諸事情で一時的に別の場所へ研究室をお引っ越ししなくてはなりません。
 
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